任意整理で偏頗弁済は問題になる?他の債務整理に切替え時には注意!



任意整理などの債務整理を検討する場合、「偏頗弁済(へんぱべんさい)」の問題について理解しておく必要があります。



偏頗弁済とは、簡単に言うと「特定の債権者に対してのみ優先的に返済を行うこと」で、債務整理手続きの中ではよく言及されるテーマです。



以下、具体的な例を紹介しながら解説させていただきます。





任意整理で偏頗弁済が問題になることはない




偏頗弁済とは、例えば以下のような場合をいいます。



A社、B社、C社といったように借金を複数の債権者からしていて、「A社にだけ返済して、別の会社には返済しない」ケース。



あるいは、



「B社には多くの金額の返済を行うが、別の会社には少ない金額しか返済しない」ケースが偏頗弁済です。



任意整理の場合にはこの偏頗弁済を行うことは問題ではありません(禁止されていません)



任意整理では「どの債権者と借金の減額交渉を行うか」を自由に選択できるため、偏頗弁済そのものが問題にならないのです。



この点、私が相談を受けた事例でも誤解されている方が少なくなかったのですが、任意整理は裁判所を通さない純粋な契約行為(一種の和解契約)ですから、当事者の合意さえあれば自由に行うことができるのです。



一方で、個人再生や自己破産などの「裁判所に間に入ってもらう形での債務整理」では、偏頗弁済は厳しく制限されます。



以下、偏頗弁済が問題になるケースについて、もう少しくわしく見ていきましょう。



偏頗弁済は「債権者平等の原則」の場合のみ問題となる




偏頗弁済が禁止されているのは「裁判所を通した債務整理」の場合で、具体的には個人再生と自己破産で問題となります(繰り返しになりますが任意整理では問題となりません)



個人再生や自己破産では、「債権者平等の原則」のルールに基づいて借金の減額や免除措置が行われます。



債権者平等の原則とは、例えば「A社から100万円、B社から60万円、C社から40万円の合計200万円の借金がある」といった場合で、



「自己破産を行って手元にある100万円だけを返済し、残りはすべて免除してもらう」ときに、



「A社には50万円、B社には30万円、C社には20万円」のように、それぞれの債権者の取り分を、借金合計額に対しての割合に応じて分配するルールのことです。



この場合に、例えば「A社には90万円、B社には10万円、C社には0円」の形で弁済を行うのが偏頗弁済で、個人再生や自己破産ではこのような弁済方法は認められません。






任意整理→自己破産への切り替え時には注意








注意しておくべきなのは、任意整理を行った後に、さらに個人再生や自己破産をといった方法を選択する可能性がある場合です。



以下では任意整理を行った後に、個人再生や自己破産に手続きを切り替えるケースでどのような問題が生じるのかについて具体的に見ておきましょう。



任意整理→自己破産への切り替え時の問題点




任意整理では基本的に利息や遅延損害金の免除だけが認められ、借金元本の減額については認めてもらえないケースがほとんどです。



実際、私が相談を受けた任意整理の相談者の中にも、借金をしたときから収入が大幅に減ってしまったような方で、借金元本の返済が難しくなる可能性が高い場合には、任意整理を行ったとしても結果として自己破産を選択せざるを得なくなったケースが少なくありません。



自己破産の場合には過去に偏頗弁済を行っていないかどうかは厳しくチェックされます。



最悪の場合には免責不許可事由への違反という理由で、自己破産による免責が認められないケースもあります。



時間的な間隔があいている場合は問題ないことが多い




ただし、偏頗弁済を行った後に任意整理をし、さらに自己破産に切り替えたとしても、この間にある程度の時間的な間隔(数か月以上)があいている場合には、偏頗弁済を理由に自己破産の免責が出ないケースは少ないといえるでしょう。



目安としては、弁護士や司法書士などに相談をし、委任契約をして債権者側に受任通知が行われた前後のタイミングでは、新規の借入はしてはいけないものと理解しておくとよいと思います。



実際、私が相談を受けた「任意整理→自己破産」のケースでも、問題なく自己破産による面積が認められた場合がほとんどです。



自己破産手続きでは裁判官から借金をした当時の状況によって具体的にヒアリングがされます。



その際に「偏頗弁済を行った後だが、なんとか元本だけでも返済しようと思い、任意整理を行ったけれど結果として元本返済が難しくなった」という説明で通ることが多いです。




任意整理→個人再生の切り替え時の問題点








任意整理を行った後に、さらに個人再生に切り替える場合にも偏頗弁済が問題となる可能性があります。



上で紹介させていた大が自己破産の場合には、偏頗弁済は「免責不許可事由」に該当する事実ですから、裁判所に偏頗弁済があるとみなされると自己破産の面積そのものが認められないとされる可能性があります。



一方で、個人再生の場合には偏頗弁済があるとみなされると、個人再生手続きそのものは却下されることはありません。



しかし、偏頗弁済とされた部分は「清算価値に上乗せ」の扱いになる可能性が高いです。



個人再生の場合の清算価値とは何か




清算価値とは、債務整理を行った後に分配されるあなたの財産はいくらなのか?の問題です。



あなたの財産のうち、清算価値に含まれる金額が大きくなればなるほど、債務整理後に持ち続けられるお金が少なくなることになりますから、清算価値はできるだけ小さくしたいのが債務整理を行う債務者側の立場です。



偏頗弁済と認定された借入は、この清算価値に上乗せになる可能性が高いです。



例えば、個人再生手続きを開始した時点での借金残高が300万円の場合、個人再生によって借金は100万円まで減額してもらえます。



しかし、清算価値として所有している財産(生命保険の解約返戻金や自動車、銀行預貯金など)が100万円あって、さらに偏頗弁済と認められた借金返済が20万円ある場合、個人再生手続き完了後の返済義務額は120万円となってしまうのです。




まとめ




以上、任意整理手続き中に偏頗弁済を行った場合の問題点について解説させていただきました。



偏頗弁済が問題となるのは、個人再生や自己破産といって「裁判所を通した債務整理」を行う場合に限られます。



どの債権者と交渉をするか?を自由に選択できる任意整理では、そもそも偏頗弁済が問題となることは基本的にないといえるでしょう。



ただし、任意整理の手続きを行った後、短期間のうちに個人再生や自己破産といった別の債務整理の手続きに移行した場合には、偏頗弁済が問題となるケースもありますから注意しておきましょう。


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