自己破産で年金滞納はどうなる?免責対象の債務の範囲について




自己破産手続きを行い、裁判所に免責決定を出ししてもらうと、原則としてすべての債務を免除してもらう(つまりチャラにしてもらう)ことができます。



ただし、法律の話で「原則として」といった言い方をした場合には、必ず例外的なケースがあります。



その1つとして挙げられるのが年金滞納などの「免責されない債務」の問題です。



今回は、自己破産でも免責されない債務について具体的なケースをみながら解説させていただきます。




自己破産で年金滞納はどうなる?







結論から言うと、自己破産を行ったとしても滞納している公的年金保険料については免責を受けることができません。



同様に、免責を受けることができない債務としては以下のようなものがあります。





  • ①滞納している公的年金の保険料
  • ②未納となっている税金
  • ③不法行為に基づく損害賠償の債務
  • ④子供の養育費など




  • 法律上、これらの債務のことを「非免責債権」と呼びます(破産法253条1項でルールが定められています)



    以下、それぞれの債務について具体的にどのようなものが該当するかについて解説させていただきます。




    ①免責されない債務:滞納している公的年金の保険料




    自己破産手続きを開始した時点で滞納している公的年金などの社会保険料は、裁判所による免責決定が出た後も支払い義務が免除されません。



    ここでいう社会保険料には以下のようなものが該当します。




  • 国民年金保険料
  • 国民健康保険料(地域によっては国民健康保険税とも呼びます)
  • 厚生年金保険料
  • 健康保険料
  • 雇用保険料
  • 労災保険料




  • 個人事業主やフリーター、学生の方は国民年金保険料と国民健康保険料を負担します。



    一方で、サラリーマンとして企業に雇用されている人は、厚生年金保険料と健康保険料を負担することになります(事業を法人化しているオーナー経営者の人もこちらです)



    また、過去に従業員を雇用していた人は、その従業員を雇用保険や労災保険といった「労働保険」に加入させる義務があります。



    保険に加入するためには当然保険料を支払わなくてはなりませんから、これらの労働保険料(労災保険料と雇用保険料をまとめていうときの名称です)が未納となってしまっているケースも考えられます。



    私が相談を受けた例でも誤解されている方が多いのは、民間の生命保険の保険料に関することです。



    民間の生命保険会社などを通して加入している個人年金の保険料などは上でいう「年金の滞納分」には含まれません。



    民間の保険会社に対する保険料については、保険料の支払いが未納となった時点で保険契約そのものが失効している可能性が高いです。



    保険契約失効後の保険料については支払い義務は普通は発生しませんが、その場合は保険事故が生じても保険金を受け取ることができないので注意してください。




    ②免責されない債務:未納となっている税金




    上で説明させていただいた社会保険料だけでなく、税金債務(租税債務)についても自己破産による免責の対象外となります。



    租税債務には以下のようなものが該当します。




  • 所得税
  • 住民税
  • 源泉所得税
  • 住民税の特別徴収分
  • 法人税
  • 消費税
  • 固定資産税
  • 相続税
  • 贈与税など





  • 企業の従業員として働いてきた人は所得税や住民税などが問題になるケースが多いです(場合によっては相続税や贈与税なども問題となります)



    一方で、事業経営者として仕事をしてきた人は法人税や消費税の未納が問題となるケースが多いですね。




    従業員から預かっている税金の未納




    私が過去に見た例で問題になったケースは、事業経営者の方で源泉所得税や住民税の特別徴収分の未納となっていた例です。



    源泉所得税、住民税の特別徴収分とは、ごく簡単に言うと従業員に代わって納める従業員の税金(所得税と住民税)のことです。



    従業員を常時雇っている企業経営者はこれらの税金を従業員のお給料から天引きし、代わりに納める義務があります。



    従業員からすると経営者を信頼してお給料からの天引きを依頼しているわけですから、これらの税金について未納があるとトラブルになる可能性が極めて大きいです。



    税金未納によるペナルティ




    さらに、これらの税金については延滞期間に応じて日割りで延滞税が計算されますから、納付が遅れれば遅れるほど負担が大きくなってしまいます。



    具体的には、延滞税は以下のように2つの期間に分け、それぞれの合計額で計算します。




  • 納期限から2か月以内の分:本来納める金額×2.6%÷365日×日数
  • それ以降の分:本来納める金額×8.9%÷365日×日数

  • ※延滞税の税率は毎年変更されます:上の税率は平成30年の税率です。




    例えば、本来の税額が100万円で、納期限から10か月(トータル300日、最初の2か月を60日とします)が経過している場合には以下のように延滞税が発生します。




  • 100万円×2.6%÷365日×60日=4273円
  • 100万円×8.9%÷365日×(300日-60日)=5万8520円
  • 4273円+5万8520円=6万2000円(千円未満切り捨て)




  • 本来100万円の負担のはずが、延滞税を合わせると106万2000円にもなります(延滞期間が延びれば伸びるほど負担もどんどん大きくなります)



    税金の滞納はとても負担が大きいですから、自己破産手続きをすすめながら少しでも早く納付を行う必要があります。




    ③免責されない債務:不法行為に基づく損害賠償の債務




    自己破産による免責を受けようとする人が、過去に不法行為に基づく損害賠償請求を受けた場合には、自己破産による免責受けてもその損害賠償債務から免れることはできません。



    典型的には暴力事件を起こしたなどの例が挙げられますが、事業経営者が法人の利益と相反するような行為を行い、背任など事情で株主や債権者から不法行為に基づく損害賠償請求を受けているようなケースも該当しますので注意を要します。




    ④免責されない債務:子供の養育費など




    自分の子供や親を扶養することについて、具体的な金額を定めた債務が確定している場合、自己破産による免責を受けてもその義務から免れることはできません。



    具体的には子供の養育費などが該当しますが、夫婦間でも扶養義務は生じますので、例えば病気で働けない夫婦の一方への扶養義務についても自己破産による免責を受けることはできません。



    なお、離婚後の夫婦間ではこの扶養義務はありません。





    自己破産免責後の年金負担はどうなる?







    自己破産の免責を受けた後には、未納分となっている年金を支払っていくとともに、免責後に発生する保険料についても負担していく必要があります。



    ごく当然のことですが、自己破産による免責を受けたとしても、その後に年金保険料の支払いについて特別扱いがされることはありません。



    個人事業主やフリーターの方は国民年金保険料と国民健康保険料を、サラリーマンの方は厚生年金保険料と健康保険料を支払っていくことになります。



    社会保険料や税金は免除や減額が認められることがある




    国民年金などの社会保険料や、税金については各種の窓口で「納付相談」を受け付けています。



    自己破産による免責を受けた人でも、これらの支払いは原則として通常通りにやっていく必要がある者の、失業や病気によって収入が得られない等の状況がある人は納付相談で支払い猶予や免除が認められるケースがあります。



    自己破産による免責を受けた後には10年間にわたってブラックリスト登録されますから、その間はローンを組むことが非常に難しくなります。



    この期間中は必ず収入の範囲内で生活費を賄っていく必要がありますから、社会保険料や税金の負担についても良く考えておく必要があります。



    私が過去に相談を受けた方の中でも、収入の低下を理由に市役所で社会保険料減免の相談を行い、結果として分割払いや支払額の減額を認めてもらえた人は少なくありません。



    社会保険料の負担に不安のある方は、市役所や年金事務所などに出向いて保険料猶予、免除の相談をしてみてくださいね。



    国民年金は「どうせ将来もらえないから保険料も払わない」は正しい?




    国民年金については「近い将来、年金機構は財政的に破綻する」ということがテレビやネット情報でよく耳にしますね。



    こうした話を聞くと「どうせ将来年金受け取りができなくなるのだから、払う必要はない」といった気持にもなりがちです(実際にそういう考えで保険料を払っていない方も多いようです)



    しかし、保険料を払った年金がもらえないということは、日本が財政的に破綻する状況を指します。



    日本の財政状況が良くないことは数十年も前からずっと指摘されていることですが、現在のところ国が財政破綻するような事態には至っていません。



    年金保険料は自分の老後の生活を保障するために自分で準備しておくものです。



    国民健康保険料については、若いうちは健康なのでとかく軽視しがちですが、事故や病気にかかってしまったときに保障が受けられないと生活が立ち行かなくなってしまう可能性すらあります。



    テレビ番組やネットニュースなどの情報はよく吟味して、安易に信じ込まないように慎重に判断することが大切です。



    まとめ




    今回は、年金の滞納がある場合に自己破産による免責を受けることができるかについて解説させていただきました。



    結論的には年金滞納分や税金の未納分は自己破産によっても免責を受けることができません。



    年金保険料や税金の未納を長期間放置していると、延滞金や不納付加算税といった重いペナルティが課される可能性がありますから注意しなくてはなりません。



    年金の滞納や、これから発生する見込みの年金保険料については、もよりの年金事務所で相談することで減額や免除を受けられる可能性がありますから、納付が難しい場合には相談してみることをおすすめします。


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